
不動産投資のひとつに、一棟買いと呼ばれる投資方法があります。一棟買いとは、どんな投資法なのでしょうか。本記事では一棟買いについて詳しく解説し、メリットやデメリットもお伝えします。
不動産投資の一棟買いとは
一棟買いとは、不動産を「一棟単位」で取得することを指します。「1室ずつ」の区分所有と比べると、かなりの資金が必要ですが、その分得られる利益も大きくなります。
10室の物件があれば、最大で10室分の家賃収入を得られる可能性があり、キャッシュフローを向上させやすい投資方法です。
建物にはそれぞれ法律によって、法定耐用年数が定められています。木造アパートの法定耐用年数は22年、鉄筋コンクリートと鉄骨鉄筋コンクリート造りの一棟マンションの場合は47年です。
法定耐用年数が長ければ長いほど価値が減少しにくく、マンションの評価が長期にわたって続きます。ただし、表面利回りはアパートの方がやや高い傾向があります。特に地方の物件では家賃が低下し、利回りが増加することが期待されます。
しかし、マンションは通常家賃が高く、アパートに比べて部屋数も多いため、巨額の家賃収入が見込まれます。
一棟投資と区分マンション投資の違い
区分マンション投資とは、マンションを単位ごとに購入する形態の投資です。1室だけでなく複数の部屋を購入することも、区分マンション投資の一環と見なされます。
一棟投資と戸建て投資の違い
戸建て投資とは、一戸建ての物件を購入する投資方法です。マンションやアパートの一棟投資と比較して、利回りがよく流動性も優れています。戸建てには、マンションやアパートとは、入居者のニーズが大いに異なるという側面があります。
一戸建ての住居を希望する入居者は、間取りや地域独特の魅力といった「戸建てならでは」の要素に惹かれて、物件を取得するのが特徴です。
一棟投資のメリット
一棟投資のメリットは、利回りの高さと資産価値が保証されることにあります。また、複数の部屋を貸し出すことで、安定した家賃収入が得られ、収入がゼロになるリスクが低い点も評価されるでしょう。一棟投資には巨額の費用が必要ですが、それに見合ったメリットもあるということです。
あらかじめ、これらのメリットを理解していれば、利益を最大化することが可能になります。一般的に、一棟投資は分譲投資よりも収益性が高くなります。収益率が高い物件は、高利益が期待できる物件と言えるでしょう。
ちなみに、表面的な収益率は、年間の賃料収入を物件の購入金額で割って算出されますが、一方で火災保険料や維持管理費、固定資産税などの経費も発生します。そのため、経費を考慮した実質的な収益率を視野に入れて、判断することが大切です。
一棟投資には、高額な収入を得られるというメリットもあります。たとえば、1部屋の賃料が10万円と仮定した場合、年間の賃料収入は120万円になります。10部屋ある物件を運営すれば、10倍の賃料収入を得ることが可能です。1部屋だけでは十分な賃料収入は得られません。
資産価値が高い
一棟投資の場合は広大な土地を所有するため、資産価値が非常に高くなるのが魅力です。建物は減価償却とともに、資産価値が徐々に低下しますが地価はあまり変わりません。
しかし、経済政策や国内の状況により、地価が上昇することもあるでしょう。資産価値が高くなれば、金融機関の融資が通りやすくなるというメリットもあります。
家賃収入がゼロになりにくい
長期的な運営において、安定した家賃収入が得られることは重要です。一棟投資は家賃収入がゼロになりにくく、空室があってもキャッシュフローにほとんど影響を与えません。
これに対して、区分投資の場合は空室が発生すると、次の入居者が決まるまで家賃収入がゼロになります。次の入居者は、宣伝やリフォームして募集しなければならないため、かなりの手間がかかります。
自由に修繕や改装ができる
一棟投資の場合、オーナーは全体の物件の持ち主であるため、修繕や改装の意思決定を自由に行えます。しかし、区分投資の場合はどこか修理が必要だとわかっていても、自分一人の権限では決定できません。
入居率を高めるには、物件のリフォームや改築は欠かせない要素です。外観が古いままだと、入居者が集まらない可能性もあります。そのため、自由に決定できることは、運営のしやすさと収益アップに直結します。
一棟投資のデメリット
一棟投資には、以下のようなデメリットがあります。
膨大な資金が必要
一棟投資には巨額の資金が求められます。一棟アパートの取得費用は数千万円に及び、一棟マンションの場合は1億円以上になるのが一般的です。
物件の価格が高騰すると、かなりの額を借り入れることになります。毎月の支出を軽減するためには、頭金の増加や返済期間の延長を考慮する必要があります。一棟投資をするには、かなりの資金が手元にないと難しいでしょう。
失敗によるリスクが大きい
一棟投資は、失敗に伴うリスクも大きくなります。一棟投資の場合は、家賃の下降や自然災害の影響も、大きくなりやすいので注意しましょう。
また、数年または数十年のうちに周辺地域で大規模な開発が行われ、物件の価値が低下する可能性もあります。家賃が減少すれば、キャッシュフローが悪化するリスクも高まります。加えて、地震や洪水が発生した場合、修理に要する期間が延びて出費も多くなる可能性があります。
投資向きの物件を見つけたら、家賃が30%、50%、80%の場合の収支のシミュレーションをして、多角的に評価しておきましょう。
維持管理費が高く手間がかかる
一棟投資は、維持管理に多くの費用や手間がかかります。たとえば、賃貸マンションの場合、大規模な修繕には3,000万円から5,000万円程度の費用がかかります。加えて、エントランスやエレベーターの清掃・点検のための費用も定期的に必要です。
火災保険料や固定資産税、都市計画税も区分所有物件より高くなるため、思った以上に管理が難しくなることもあるでしょう。
買い手の獲得が難しい
買い手の獲得が難しいのも、一棟投資の課題です。マンションやアパートは、数千万~数億円の規模で取引される物件です。購入する側は、高額な費用に見合う魅力的な物件でなければ、購入を決断できません。
販売から売却に至るまでの期間は、通常1カ月から3カ月程度ですが、6か月以上経っても買い手が見つからないこともあるでしょう。お金が必要な時に売却できなければ、借金するしかありません。迅速な売却が難しい場合も、想定しておくことが大切です。
一棟投資に向いている人
以下の2つの条件を満たせる人は、一棟投資に向いています。
節税が可能な人
3,000万円以上の金融資産を持つ人や、高収入の人は一棟投資に向いてい
ます。一棟投資は収益が大きいため、リスクも伴います。収入が低い場合は、ローンが難しくなることもあるため、「本当に自分に向いているのか」を確認してから、一棟投資に挑戦しましょう。
節税メリットを享受できる人
節税メリットを享受できる人は、一棟投資に向いています。具体的には年収が1,200万円以上(手取り900万円程度以上)の人です。一棟物件の場合、減価償却費が多くなることがあり、不動産所得が赤字になることも考えられます。
たとえば、手取りが1,000万円で不動産所得がマイナス200万円だと仮定すると、不動産所得は給与所得と合算可能なので、全体の課税対象所得は800万円となります。
日本では課税対象所得が900万円を超えるかどうかで、税率が大きく異なります。大きな節税メリットが期待されるため、年収が1,200万円以上(手取り900万円程度)の人におすすめです。
3,000万円以上の金融資産を保有している人
金融資産が3,000万円を超える人も、一棟投資に向いています。一般的に、ローンの審査基準には「金融資産」も考慮され、対象としては預貯金、株式、債券、投資信託、生命保険などがあります。
審査に通過しやすくなるだけでなく、融資の条件も有利になる場合があります。金融資産が豊富であればあるほど、余裕を持った不動産投資ができるでしょう。
まとめ
一棟買いは、不動産投資の中でも大きなリターンが期待できる手法ですが、膨大な資金やリスク、維持管理の手間など、課題も多く存在します。一方で、利回りの高さ、資産価値の向上、安定した家賃収入、自由な修繕が可能である点は大きな魅力です。高収入や十分な金融資産を持ち、節税効果を享受できる人に特に向いています。投資を始める前に、シミュレーションやリスク分析を十分に行い、自分に合った戦略で挑むことが重要です。
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